大学広報誌えんのき No.58.2008年 冬号01

えんのき表紙

表紙:大切にしたい日本の心
「茶室飯山庵」が席開き


2008学部長対談

キーワードは好奇心 知恵と知識を掛け算に

「興味の原点は『人間』つまり男と女」と語る若尾真一郎
「研究そのものが好奇心のかたまり」と語る久米祐一郎
新しいものが好き、モノを創るのが好きと言う二人の学部長
楽しむことの達人である二人が創りだす東京工芸大学の未来とは......
学部長対談
久米祐一郎 くめ ゆういちろう 若尾真一郎 わかお しんいちろう

工学部長:工学博士。画像処理、ヒューマンインタフェース、バーチャルリアリティ等を専門とする。好奇心旺盛で研究テーマも多岐にわたる。

趣味も多く、登山、家庭菜園、カメラ、マリンバ(木琴)演奏など。

芸術学部長:イラストレーション、グラフィックデザインの第一線で活躍中。

第8回国際ユーモア・アートビエンナーレ金賞(イタリア)など受賞は多数。作品集も数多く出版。

好奇心旺盛の大学 陣地作って戦争ごっこやってた あの夢中になれた感じが大切

久米祐一郎:工学部長

久米祐一郎:工学部長

もともと写真からスタートしている本学。工学部は40年を経過して、時代の流れに沿って発展をしています。伝統を活かしながら、これからの日本で活躍できる技術者を育て上げたいですね。人間中心の技術を創っていけるように。

若尾真一郎:芸術学部長

その伝統からゲームやマンガにまで発展してきている。新しいモノを追加し続けてこういう形の大学に到達しました。一言で言えば好奇心旺盛の大学。これでガンガンやるべきですね。突っ走って行きます。

久米

私の研究そのものが好奇心のかたまり。アミューズメントパークのように学生達は楽しんで研究しています。仕事だって楽しんでやった方が良い成果が出せるでしょう。嫌々やる仕事の給料って単なる労働の対価にすぎなくなってしまいますから。もちろん楽しむことだってずっと一定ということはないですよ。山あり谷ありで苦しいこともある。総合して見れば、楽しみ方のレベルも上がっていくというのがいいですね。でも最近の学生は、楽しむこと自体が少し弱まっている印象を受けますね......。

若尾

今の若い人達は今の人なりの楽しみ方があると思いますよ。パソコンだったり、携帯だったり。でも、どうもスケールが小さいような気がします。レディメイドされた情報を基にした考え方はダイナミックさがありませんし、「ものづくり」としての個性を失うかもしれませんね、このままだと。楽しさっていうのも、大学に入れば誰かが急に与えてくれるというものではないと思います。やはり小さい頃から色々な好奇心を育んでいないと。

久米

楽しいということは、いかに興味を持って集中できるかどうか。子供の頃、空き地で陣地を作って戦争ごっこをやっていた、あの夢中になれる感覚が重要なのかもしれませんね。懐かしんでいてもしょうがないのですが。


私たちがわくわくしないと 学生には伝わらない もっと面白いことを企てないと

久米と若尾

若尾

やはり新しさが欲しいじゃないですか。本学では新しいことをやっています。そうなると学生たちだけが楽しんでいれば良いってわけじゃない。教える側のスタッフ、先生達がわくわくしていないと。楽しんでいないと学生には伝わらないですよ。もっと面白いことを企てないと。現状維持の姿勢ではだめ。

久米

確かに。教える側にも、わくわくする感じが欲しいですよね。それが一番大変ですけどね。教科書に載っているわけじゃないから。

若尾

芸術学部では、有名になる、メジャーになるっていう意識が強い。『自分』ってものへの意識も大きい。自分で試して、自分で楽しむ。それが将来へ繋がっていくという感じですね。

久米

そこは工学部と少し違いますね。工学は卒業後さらに何年も技術を高める修行をしなくてはいけない。独立よりも、より徹底して基礎を固めていく。知識とともに知恵も学んでいます。


手塚治虫さんだって医学部だった 無謀かと思えた工芸融合 やって正解! プラスです

若尾真一郎:芸術学部長

若尾

今までも工芸融合は叫ばれていましたが、共通項が少なかったように思います。先生同士のぶつかりあいが不足していた。でも、もう始めなくては。去年の夏、初めて『工芸融合の課外授業』を実施しましたが、それもまだまだ実験段階。将来的には工房を建てて、工・芸の学生が一緒に作品を創作するのが夢です。

久米

工芸融合の課外授業も少し無謀かと思いましたが、人数も集まりましたし、手ごたえのある結果が残せました。やはり学生たちも工芸融合を求めています。やって正解。プラスになっていますよ。企業で商品を開発する時、工芸融合は当たり前のことなのですから。

若尾

クラブや体育の授業では工学部と芸術学部の学生が一緒になって活動していますが、それをもっと授業に取り入れたら、学生同士で仲間も増えるし、大きく可能性が広がっていきますよ。長い間テーマにしてきましたが、もっと大規模に取り組む必要があります。カリキュラムなどを含めて一回、解体してみることですね。そうしないと本学の良さや特色が出せないし、これから先、大学としても生き残れない。

高校時代、学校の先生から『お前は文系、理系』なんて分けられてしまうでしょう。それって可能性を狭めていますよね。そのまま大学に進み、社会人になってもつまらないと思いますよ。つまり無個性。もっとフリーでいいんです。本学には分野を超えた勉強が出来る可能性があります。それからゲームやマンガやアニメーション、映画等に偏見を持たないでほしいですね。『漫画家になりたい』って子どもが言ったら『話を聞いてやるか』という親の姿勢がほしいと思います。むやみに反対して子どもが納得のいく道に進めないのは悲しいこと。マンガやゲームは日本がリードする新しい文化です。産業としても大きくなり、人材も求められています。工学部出身の売れっ子漫画家なんていたら面白いじゃない?

久米

手塚治虫さんだって医学部だったわけですしね。そう、自由に、破天荒でいいんですよ。型にとらわれてこだわっていても、面白いものは生み出せませんから。とにかく『やってみよう』っていう感覚が大事。『案ずるより産むが易し』です。頭を使うことも手を動かすことも。私もそうやって生きてきましたから。何でもかんでもやっちゃう性格で......。

若尾

興味の原点って、私の考えは『人間』つまり男と女だと思っています。恋愛も含めてお互いを知りたいと思う気持ち。そこからいろんな要素が生まれてくる。若尾研究室では『アフターファイブは男と女であれ』って学生に伝えているほどです(笑)男と女がいることがモノを生み出す原動力になるし、永久不変のテーマですから。

久米

なぜ生物にはオスとメスがあるのか。オスとメスとは何か。それは自分の遺伝子を残すため。種の保存の話になりますが、私は生物専門ではないので......(笑)


分母がしっかりしていればいい まじめ分のふまじめでも 今後の東京工芸大学に乞うご期待

若尾と久米

若尾

新しいこと、斬新なことは先にある。それを常に追いかけられる。そういう大学でありたい。後ろは見ない。でも遠い未来でもない。4、5年先なら出来るということをいち早く実現させて世の中にアピールしていきたいですね。工芸融合ということに違和感を持たれる前にやってみる。そういう画期的で面白いことから学生に広まっていくんです。

久米

そうですね。若尾先生のおっしゃることに付け加えて、温故知新の心を忘れないことも大切。伝統にのっとった先見性を持って追い求めていきたい。そして子供のように純粋な好奇心と行動力で。私は子供の頃から模型とか作るのが大好きでしたね。そして高校に入って山男になりました(笑)大学に入っても登山は続けていましたね。雪山では危ない目にも遭いましたよ(笑)チャレンジすることが好きなんです。

若尾

私の子供の頃はすっごいまじめ。それが大学に入って、こういう風になっちゃった(笑)でもね、分母がしっかりしていればいいんですよ。まじめ分のふまじめでも。遊びも大切ですから。私にとって大学はいい意味で自分を変化させてくれた場所です。

久米

若尾先生とは考え方や目指しているものが共通しているように感じます。新しいことが好きで、楽しいことが好きで、ポジティブで。

若尾

久米先生とは話しやすいですよ。学部長どうしが話やすいのはいいことですよね。何でもザックバランに(笑)お互いの共通キーワードは『好奇心』ですね。

久米

その好奇心を大切にして、規制されていたものから開放される。または、好きだったという気持ちをよみがえらせる大学でありたい。『今後の東京工芸大学に乞うご期待』という感じです。やはり夢を実現するにはひとつひとつの積み重ねで、組み合わせでどんどん可能性が広がっていきますよ。知恵と知識を足し算ではなく、掛け算にして活かしてほしいと思います。登山と同じです。ある程度に到達すれば何でも楽しいでしょう。つまずいたって這い上がれるはずですよ。楽しめれば。

若尾

最近は会議まで楽しくなってきちゃったんだけど、これってまずいよねえ(笑)

久米

それはまずい(笑)


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