肖像 - 視線の行方 (写大ギャラリー) [04月15日(月)~06月09日(日)]

  • フェリックス・ナダール
    「サラ・ベルナールの肖像」1859年
  • 土門 拳
    「志賀直哉」1951年
  • 木村伊兵衛
    「高峰秀子」1956年

〔写真展概要〕
本展は、写大ギャラリーが保有する約1万点のオリジナルプリント・コレクションの中から、肖像写真の名品を選び、特に被写体の視線の行方に着目して展示するものです。

19世紀の写真発明以来、肖像写真は、写真表現において最も人気のある分野として数多く撮影されてきました。写真館などで商業的に撮影されたものや、芸術的な表現として撮影されたもの、個人的な趣味として撮影されたもの、あるいは社会的な記録から政治的な意図のあるものまで、肖像写真は、社会の中で様々な目的や用途で撮影されてきました。

それらは、単なる人物の外見の記録ではなく、その容姿と表情をとらえることによって、被写体となる人物の人柄や性格までをも表現し、その人物の記憶を共有する媒体として人々に親しまれてきたのです。

肖像写真の中には、被写体とカメラ(写真家)が対峙し、その人物がカメラのレンズに向かって視線を向ける、いわゆる「カメラ目線」の作品が多く見られますが、意外にも、カメラのレンズから視線をそらしている作品も多く存在しています。

人物の表情をとらえた一瞬のスナップ写真とは異なり、レンズから視線をそらした多くの肖像写真は、撮影した写真家が、敢えてカメラと写真家自身の存在を画面から消し、その人物の自然な表情を捉えようと試みた表現と言えるでしょう。

いわゆる「カメラ目線」の肖像写真が、撮影する写真家の存在を意識させ、同時に、その視線から被写体となっている人物の自我を強く感じさせるのに対し、視線をそらした肖像写真には、一見自然な佇まいのようでありながら、その人物の思考の彼方を示唆しているかのような深遠な印象を受けます。

本展では、被写体となった人物が、何を想いながら、どこへ視線を向けているのか、そんなことを想像しながら作品を楽しんでいただければと存じます。

本学は、大正12年(1923年)に創立された我が国で最も歴史と伝統のある写真教育機関であり、本学の卒業生の多くが営業写真館など肖像写真の分野で活躍してきました。90周年を迎えた本年、芸術学部写真学科内に、新たに肖像写真の研究と教育を専門とする「肖像写真研究室」を4月より設置いたします。本展は、この「肖像写真研究室」の新設にあわせて企画したものです。