工芸大のデッサン 2008 - 2013 (授業作品展示 1/4~2/15 )

この展示は、東京工芸大学 芸術学部で実施しているデッサンの授業(2008年度~現在まで)の記録です。授業は2年間、60週で完結する演習科目です。1年次ではモチーフの観察描写を通して現実を把握すること、2年次では観察から発展して巨匠の技法と時代の表現を学ぶことがテーマです。ここでは2年次30週の授業、15課題の歴代の学生作品を展示します。この展示が、工芸大のデッサンと芸術を考える機会となれば幸いです。

東京工芸大学 甲賀 正彦

会期
2014年1月4日(土)~2月15日(土) 8:00 - 20:00 (日曜・祝日休み)
会場
東京工芸大学 中野キャンパス 1号館インフォメーション
デッサンについて
 デッサンが視覚芸術表現の訓練に有効なことは、大学や専門学校の表現カリキュラムに必ず設定されている事から明らかです。 しかし、なぜデッサンなのか? デッサンの授業内容はどうあるべきなのか? を模索しながら今日に至っています。
なぜデッサンなのか? 
1.観察眼 ― 眼を鍛えることは重要ですが、その鍛え方が難しい。デッサンは最も良い訓練方法の一つです。デッサンは描くために対象を凝視し続ける。本当に疲れる作業ですが、凝視し続けると眼の精度が上がり、最初には気付かなかったものが見えてきます。多くの人が見逃す何気ない場面から、面白さを見つけ出すクリエイターの眼を獲得できます。
2.忍耐力 ―デッサンの苦しさの一つに、ゴールが見えない苦しさがあります。修正しながら自問自答をくり返しても、なかなか完成は見えてこない。しかし、それはデッサンに限ったことではなく、創作すべてに当てはまることです。創作はマラソンのような忍耐力を必要とします。デッサンは忍耐力を鍛える効果的学習なのです。
3.現実の理解 ―芸術は作られるもの。現実には不可能なことも自由に表現できます。だからこそ、目の前の現象をあるがままに描き、現実を知ることが重要です。現実を知って初めてフィクション(イメージや抽象)も表現できるのです。
デッサンの授業内容
 この授業では研究対象として作家、時代を紹介し、表現に引用してもらいます。21世紀の表現者である私たちは、歴史の最先端にいて、これから未来の表現を創出して行くのですが、過去に学ぶことを忘れてはいけません。「過去に学ぶ」、頭では理解してる人は多いのですが、体験が伴わないので、リアリティを持って受け止めることが出来ません。この授業では制作をしながら作家と時代に触れ、歴史上の表現を自分なりに体験します。それは、概念でない自分だけの実感の伴った体験ですから、リアルな学びがあるのです。
 過去の巨匠たちも皆研究していました。
 ポール・セザンヌ(1839-1906)はルーブル美術館に通ってヴェロネーゼ、ティントレットなど、ベネチア派の絵画から色彩による画面構築を研究しました。
 ホアン・グリス(1887-1927)はセザンヌを研究して、色彩による完成度の高いキュビズムを開発しました。
 マルセル・デュシャン(1887-1968)は印象派、ナビ派、野獣派、キュビズム、様々な絵画表現の技法を経た後、レディメイドに到達しました。
 アンリ・マティス(1869-1954)はルノアール(1841-1919)を、ルノアールはルーベンス(1577-1640)を、ルーベンスはイタリアでルネッサンスの巨匠を模写をとおして研究しています。
 このように、過去と未来は繋がっていて、新しい表現も過去の優れた作品が土台となっています。いきなり名作は生まれません。巨匠たちは私たちの先輩であり、悩みを相談すると良いアドバイスをしてくれる近い存在です。過去の膨大な表現は、私たち表現者にとって、価値ある宝の山なのです。
研究に於ける Web の利用
近年、世界の美術館サイトの充実ぶりは目を見張るものがあります。高解像度でのコレクションの公開、動画での解説など、制作の模範となる研究や調査の材料があふれています。キャンパスでは、教員やクラスメートに直接会って刺激を受けますが、PCの画面からも刺激を受けてほしいのです。

甲賀 正彦