東京工芸大学芸術学部フェスタ2021電子図録

28 芸術学部フェスタ2021 FESTA-11 作品 写真学科 圓井義典 MARUI Yoshinori 1973年大阪生まれ。専門は写真制作、写真論および写真表現史。「天象(アパリシオン)」(個展、PGI、2020 年)、「点−閃光」(個展、PGI、2016年)、「沖縄プリズム 1872-2008」(グループ展、東京国立近代美術館、 2008年)など展覧会多数。2015年に研究会「写真×哲学」を哲学者の吉田幸司と共同で立ち上げ、異分野間 の交流を通じて21世紀にふさわしい写真やアートのあり方を模索している。美学会、日本ホワイトヘッド・プロセス 学会会員 『感性的なもののパルタージュ』などに見られる、フランスの哲学者 ジャック・ランシエールの考え方をなぞるなら、アートは以下の3つの性 格を持ちえます。 その第一は、作者と鑑賞者間で共有されている、対象そのものがあらか じめ持つ意味や意義を直接再現する性格。第二は、作者と鑑賞者間で あらかじめ共有されている特定の意味や意義を、対象を通して暗示す る性格。第三は、鑑賞者が対象と結びつけているある特定の意味や意 義を一旦無効化する性格です。 ランシエールと同様、私もこのアートの持つ第三の性格にこそ可能性を 感じています。なぜならば、対象を見る際の私たちのすべての判断が、 結局は社会の中で共有されているさまざまな意味や意義と結びついた 一時的な感性的・政治的判断にすぎないということを教えてくれるもの だからです。 本作品のタイトル「天象(アパリシオン)」は、テオドール・アドルノの絶 筆となった『美の理論』からとりました。一時は音楽家を目指し、『啓蒙 の弁証法』を著した彼が最期までアートに関心を持ち続けた理由も、こ のアートの持つ第三の性格にあることは明らかでしょう。 天象(アパリシオン)

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