東京工芸大学芸術学部フェスタ2021電子図録

44 上代日本において色といえば、主に「赤・青・黒・白」の四色と、自然のも のから作り出された色を指したという(伊原1980)。前者は「明(あか)・ 漠(あお)・暗(くろ)・顕(しろ)」という光の感覚を基とするものであり、後 者は植物や土壌などを材料とし、それを「塗る」「染める」などして生み出 されたものである。そして、自然のものから作り出された色のうち、ベニ バナで染めたものが「紅(くれない)」である。 ベニバナは、エジプトあたりが原産とされるキク科の植物であるが、中国 を経て日本に伝わったとされている。このベニバナを染料とする美しい 色に魅了された日本の人々は、「紅」を歌に詠み込むなどして自らの心情 を表わした。特に、「紅」が美しいと同時に褪色しやすいことから、「紅」を うつろう人の心に喩えて表現したものが『万葉集』などにみられる。 本学ではベニバナに関する科学的研究及び映像作品の制作が積み重 ねられているが(佐々木麻衣子「紅」2016 など)、本発表では、古の日 本文学において「うつろうもの」の喩えとしてもちいられた「紅」について 探りたい。 お茶の水女子大学文教育学部言語文化学科日本語・日本文学コース卒業。同大学院人間文化研究科国際日 本学専攻修了。博士(人文科学)。グローバル化が進む現代社会で生きていくための「ことば」の教育のあり方を 模索することを目的とし、言語生態学を理論的支柱とする持続可能性日本語教育の可能性を、理論と実践を往還 しながら追求している。 芸術学部フェスタ2021 FESTA-19 研究ポスター 基礎教育 小田珠生 ODA Tamaki 日本の古典文学における「くれなゐ」について ―うつろうものの喩えとして―

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