科目名 文芸学特論(Advanced Lectures on literature)
担当教員 北野 雅弘
単位数 2
授業区分 選択
年次配当 1
開講区分 2018年度 前期
科目概要 現代の文芸理論について、その諸概念の深い理解を促す。
到達目標 現代文芸理論の中心にある「ナラトロジー」を構成する諸問題への総合的な理解を得、説明できる。
授業内容 橋本陽介「ナラトロジー入門」をテキストに、プロップからジュネットまでのナラトロジー(物語論)の概要を見る。
授業計画 (1)ナラトロジーについて
文学を物語として捉える理論系が「ナラトロジー」と呼ばれる、1950年代に成立した学問です。その起源は、20世紀初頭のロシア・フォルマリズム及び30年代のウラジミール・プロップの形態学にあります。さらに、議論はほぼ悲劇という特定のジャンルに限定されていますが、アリストテレス『詩学』の影響は、文学について理論的に考えようとする発想にとって重要です。ここではそうした歴史的背景についての大まかな把握を試みます。
(2)~(5)プロップからバルトまで
この四回は、テキストの第一章に即して、プロップ、ブレモン、バルトの物語の機能論を検討します。プロップは、魔法昔話という特定のジャンルに限定してですが、物語が31の「機能」から構成され、その順序が不変であると考え、すべての多様な登場人物を六つの「役割」に分割して形式化を試みました。ブレモンとバルトはプロップの議論にインスパイアされ、機能論、役割論を物語一般に拡張するために変形します。その展開を辿ってゆきます。
(6)~(7) ロシアフォルマリズム
テキストの第二章に即して、ナラトロジーの前段階としてのソシュール言語学とロシアフォルマリズムについて、特に後者の「ファーブラ(出来事の時間的因果的関係)」と「シュジェート(作者によるファーブラの変形、現実化)」の対概念を中心に検討します。初期のフォルマリストたちはとりわけファーブラに対してシュジェートを重視し、そこに物語の芸術性を求めました。これは後に撤回されますが、対概念そのものはナラトロジーの中で。「イストワール」と「ディスクール」として維持されます。
(8)~(9) 語り手
テキストの第三章に従って、「語り手」の問題を検討します。主観的感想をふくめて前面に出る場合でも、出来事の描写に徹する場合でも、物語のテキストは何らかの「語る主体」を持っており、それは現実の作者とも、あるいは物語全体を構成する主体として仮構された作者とも少し異なっています。語り手とは何か、について現代の物語論は必ずしも見解を共有しませんが、いくつかの語り手についての議論を検討します。
(10)~(12) 物語の時間
テキスト第四章に従って、物語の時間についてのジュネットたちの議論をまとめます。物語られる出来事は因果的・時間的に配列されているとしても、それは必ずしもその順序で作品の中で記述されるわけではありません。ミステリの謎解きの場合のように、最初の出来事が最後に語られることもあり、物語の中で省略されるもの、要約的にしかかたられないもの、複数生じるのに一度しか語られないものもあります。ジュネットは「順序」「持続」「頻度」の概念でそれを論じますが、彼の議論はかなり説得的です。また、語り手と語られる出来事の時間的関係も問題になります。語りの時間は基本的に出来事の時間より後ですが、日記体の物語では出来事→語り→出来事のように交替します。これは「物語行為」のあり方としての時間の問題として、上の三基準とは異なる検討が必要です。
(13)~(15)焦点化・まとめ
テキストの第五章に従って、視点と焦点化の問題を扱います。例えば三人称小説の場合、語り手は登場人物の内面に入り込むことが多いでしょうが、その入り込み方は様々です。すべての人物の内面をすべて知っていて語る「全知の語り手」なのか、特定の人物の内面については詳しいがそれ以外はそうでもないのか、すべての人物について、内面には踏み込まないのか。ジュネットはこの問題を、語り手が人物についてどこまで知っているのかという問題として定式化しましたが、知識の問題かどうかは別として、焦点化は物語理解の重要なポイントになります。
履修上の注意 取り上げる文学作品等についてできる限り調べておくこと
準備学習(予習,復習について) 授業内容はパワーポイントの配付資料版を配ります。授業中は配付資料に書き込んで、家でノートを完成させて下さい。
試験方法 授業内容からレポートを課します。
成績評価方法 レポートの得点と普段の授業への参加内容を考慮して総合的に判定します。
教科書等 橋本陽介 「ナラトロジー入門:プロップからジュネットまでの物語論』(水声社) 2800円(税別)
備考
ルーブリック{http://www.t-kougei.ac.jp/student/kyoumu/rubric/2018art/501050.pdf}
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連
{http://www.t-kougei.ac.jp/student/kyoumu/curriculum_graduateart/}