仕事

2018.2.2

キャラクタービジネスで活躍。卒業生朝田めっこ先生「ごろはむ」シリーズ誕生秘話

2017年7月 芸術学部オープンキャンパスにて取材
マンガ学科

2017年7月16日(日)、中野で行われた芸術学部のオープンキャンパスでは、プロの作家として活躍しているマンガ学科卒業生、朝田めっこ先生(キーホルダー『ごろはむシリーズ』など)と本校非常勤講師・高木大先生が「マンガとキャラクタービジネス」をテーマにお話してくださいました。「ごろはむ」とは、人気アニメやゲームのキャラクターがクッションをかじっている姿を描いたキーホルダー等のグッズです。「ごろはむ」の商品化のきっかけやその後の展開。マンガ学科を目指す受験生たちへのメッセージも伺いました。

きっかけはLINEグループから

もともと、朝田めっこ先生が描いていた猫キャラクターの「ごろはむ」

朝田めっこ先生(以下、朝田):初めましてイラストレーターをしております朝田めっこと申します。この春卒業したばかりで今23歳です。この仕事始めてもうすぐ1年になります。今日はよろしくお願いします。

高木大先生(以下、高木):東京工芸大学マンガ学科でキャラクタービジネスの講義をやらせていただいております高木大と申します。今、私はアニメの版権をとって商品にするビジネスをしています。朝田めっこさんデザインの「ごろはむ」という商品ができた経緯を説明いただけさせていただきたいと思います。

左からマンガ学科細萱敦教授、朝田めっこ先生、高木大先生

高木:僕は学生と一緒に、50数名が登録しているLINEグループを作っています。そのグループはお互いの情報を交換したり先生に質問したりすることを目的にしています。その中で、僕が「商品の企画を出してみない?」とメッセージを送ったところ、一番初めに商品の企画を出してくれたのが朝田めっこさんでした。

彼女はもともと「ごろはむ」という猫マンガをTwitter にあげていて、そのときに、Twitterのアイコンで使っていたのが、猫がクッションをかじっているイラストでした。そしてその企画のときに描いてくれたものが人気アニメ『けいおん!』版の「ごろはむ」でした。

朝田:色々と応募していた中の一つがこの企画だったんです。例えば、マンガ学科では、マンガ家の先生のアシスタントの募集などもあります。そういったものにもよく応募していました。

この企画に応募するときは、イラストがあまり得意ではなかったので「スピード」と「作戦」を意識していました。「スピード」は、一番最初に応募すると目に留まりやすいので。「作戦」は高木先生も私も『けいおん!』が好きなのは知っていたので、先生の好きな『けいおん!』に関することだったら注目され採用されるのではと考えたところです。

高木:彼女は、僕がクライアントだとすると、クライアントが何を求めているかというニーズをすでに知っていて、そこに対してフックをかけてきているんですね。僕も「あっ、あずにゃん(『けいおん!』のキャラクター)描いてある。結構かわいいじゃん」とそのまま会社の企画会議にかけました。そして、会議でも「これは、かわいいんじゃないの?」という話になって、版権ビジネスで「描き起こし」と呼んでいるイラストを改めて描いてもらってTBS(『けいおん!』を放送しているテレビ局)の版権の窓口の方に持っていったところ、オッケーが出たんです。「描き起こし」で許諾がとれるというのはなかなかないことですが、とれたのでそのまま話を進めることにしました。

みなさんの中には、アニメイトなどでSDキャラクター(SDはスーパーデフォルメの略。キャラクターを2~3頭身に小さく描いたキャラクターの総称)の缶バッチやアクリルキーホルダーをよく見かける人もいると思います。なぜかというと、缶バッチやアクリルキーホルダーはオンデマンドという方法で商品を作るからなんです。オンデマンドというのは一個から商品を作れる方法なので、メーカーは在庫を持たなくて良く、早く商品が作れるというメリットがあります。ただ、多くのメーカーが申請するので商材として被ってしまうんです。そのため、メーカーはオリジナルのスタイルを作り、版元もデザインがちがうからちがう版権として考えようという流れが出てきました。例えば、キャラクターがつままれている姿を描いた「つままれ」シリーズがあります。そして、僕らのところでは、「ごろはむ」をスタイルにして缶バッチやアクリルキーホルダーを作っていこうとなったんです。

戦略的に商品展開

「ごろはむ」第1弾は大人気アニメ『けいおん!』

『けいおん!』の「ごろはむ」は2016年8月21日に東京駅のキャラクターストリートで売ってもらうことにしました。なぜ、その日かというと理由があって、『けいおん!』のりっちゃんというキャラクターの誕生日だからです。『けいおん!』は番組が終了してもう、すでに7年程経つのですが、それでも根強いファンがいて、今でもキャラクターの誕生日になると20人程度のファンが朝から店頭に並ぶんです。7年前の放映当時には、1300人のファンが店頭に並んだこともありました。キャラクターの誕生日は、ファンの方がTwitterでお祝いし、グッズの情報も拡散してくれるので、その日に合わせて販売するのはとても大切なことなのです。

朝田さん、自分のデザインした商品が販売されて、どんな気分でしたか?

朝田:単純にうれしかったです。プロを目指して頑張ってきて、プロになったら浮かれないようにしよう!って思っていたんですけど、さすがに浮かれて、東京駅に買いに行きました。サンプルもらえるのに。

高木:彼女にとくに指示などは出していないんですけど、自分の商品が売られている場所に行くことは非常に大切なことです。お客様がお財布からお金を出して買ってくれる姿をみたり、実際に自分で買ってみたりすることで、自分でデザインしたものがどうやってお金になるんだろうっていうことが、そこでリアルにわかるんですね。


高木:『けいおん!』のアクリルキーホルダーを作っているときから、「ごろはむ」をシリーズ化して矢継ぎ早に展開していこうという計画を考えていました。そして、「プリパラ」の「ごろはむ」も9月17日に販売することになりました。「プリパラ」は、公式Twitterでツイートしていただいたおかげで700リツイートを獲得したこともありました。その後もカードゲームの「アンジュ・ヴィエルジュ」などたくさんのシリーズが作られました。この8月には「けものフレンズ」の「ごろはむ」が販売され、今、「ごろはむ」はもう103体にもなります。

手塚プロと契約も

中でも、一番大きかったのが、「鉄腕アトム」や「ブラックジャック」の手塚治虫先生の手塚プロとの契約です。手塚プロのキャラクターは、手塚プロと契約したイラストレーター・デザイナーしか描けません。リリー・フランキーさんなど、世界で13人。朝田めっこさんは、その中の人になったんです。

きっかけは、僕が手塚プロの方と食事する機会があり、「最近、どんな仕事をしているの?」と聞かれたことでした。たまたま「プリパラ」のキーホルダーを持っていたのでお見せしたところ、「手塚プロでも作ってみたら」と提案してくださったんです。そして、朝田めっこさんと手塚プロが契約し、僕がライセンス料をお支払いし商品化しました。

朝田:第3弾の「ごろはむ」だったので、まだ、契約のことなども知らず、「契約書にハンコ押して返送して」っていわれて「厳しい版元さんもいるんだなあ」という印象だったんです。そのあとに世界で13人という話を聞いてびっくりしました。あとから驚くことが多くて、調子に乗らないように頑張っていこうと思います。

高木:手塚プロといえば、例の話をしてあげてください(笑)

朝田:高木先生と手塚プロさんに御挨拶に行ったときに手塚プロの方とFacebookを交換したんです。その夜に改めてFacebookで御挨拶したところ、「手塚先生の制作していた部屋をみる?」といってくださって、まず、そんな部屋が存在しているんですか!と驚きでした。そして高木先生と一緒にお伺いすることになって。制作していた机と、厳重に金庫で保管されていた生原稿を数枚見せていただきました。本当に、驚きでしたね…

高木:世界の手塚先生のお部屋だから凄い豪華な感じかと思ったら、質素な、僕たちが昭和の頃に体感しているような普通の作業場でした。こういうところで創作活動をしていたんだと思うと、かえって重みを感じました。そういうところに入ることができて彼女も凄く地力がついたんではないかなと思います。

質問タイム

質問:デザインしているときに意識していることはありますか?

朝田:ファンの方を裏切らないように気をつけています。例えば、「ごろはむ」はゴロゴロしているときという設定なので、普段の服装とはちがう家着を着せるのですが、そういった場合もそのキャラクターの個性を反映させるようにしています。自分の知らない作品もできるだけ観たり、ネットで調べたりして、そのキャラクターについて知るように心がけています。

質問:何でクッションをかじらせようとしたのですか?自分もかじっていたんですか?

朝田:私は、クッションをかじらないです(笑)デザイン的なことをいうと、そのキャラクターのテーマカラーが決まっていることが多いので、クッションの大きい面積をその色にすると目立つということ、早く描けること。あとは単純に、クッションをかじっている姿ってかわいいと思ったことからです。

質問:イラストの応募はいつ頃から始めましたか?

朝田:大学2年生くらいから乙女ゲームの絵師募集に応募しまくって落ちまくっていました。落ちても次行こうって思えるようになったのは良かったなと思います。あとはマンガの投稿や持ち込みも大学1年生から行っていて、ボロクソいわれて泣く…なんてことも何度か。

質問:大学時代はどれくらいイラストを描いていましたか?

朝田:落書きも含めると毎日描いていましたね。卒業後は、「お仕事だけになってしまってマズイな」と思ったので、1日に何枚などと決めて意識して描くようにしています。

質問:絵を描くことで一番気をつけていることは何ですか?

朝田:自分がキュンとするのは何か、自分の萌えを研究しています。例えば、私は二の腕フェチなのでお肉を多めに描いたり。そういった事は、他の人は気がつかない部分だったりもするのですが、気がつく人は気がついてくれて、結局は、自分の強みになると思います。

質問:会場の方へのメッセージ

朝田:(このイベントは)オープンキャンパスなので、この大学に入るか検討中の方がいらっしゃると思います。保護者の方は、マンガ学科というと、4年間学んで、そのあと仕事がもらえるのか、食べていけるのかということが最も気になると思います。

イラストに関していえば、私が大学に入学した頃に比べるとソーシャルゲームが流行し、お仕事は確実に増えています。ソーシャルゲームでいうと、モンスターが描けるかな、背景が描けるかなと自分の適正で仕事を見つけていくのですが、モンスターもダメ、背景もダメとなると、仕事の幅は狭まってしまいます。自分の好きなことやできることが仕事につながるかは大学時代に模索していくといいと思います。

個人的なことをいわせていただきますと、中学、高校時代は「決められたとき」に「決められたこと」をやらなければいけなくて、それが凄く嫌いでした。けれど、イラストのお仕事は、自分のやりたいことを、自分のペースでできます。なので、この1年間は人生の中で一番楽しい1年間でした。大学入学の時期から考えると、楽しいことしか未来にないので、みなさんも安心して大学に入学していただけたらなと思います。

高木:マンガ学科の卒業生の仕事は、マンガ家やイラストレーター以外にも、今回お話させていただいたようなキャラクタービジネスというものもあります。今一番活力がある業界は、朝田さんの話にもあったソーシャルゲームなどのインターネット系サービスです。そういった企業さんが求めている仕事の一つがイラストなんですね。それに、イラストやマンガというのは、 AIが進んでいっても無くならない仕事の一つだともいわれています。

また、もう一つ、知っていただきたいのがSNSの大切さです。危険などともいわれていますが、だから禁止するのではなく正しい使い方を学んでいただきたいと思います。なぜなら、この「ごろはむ」も広告は出していないからです。「ごろはむ」公式Twitterと、高木大という私個人のFacebookで告知しているだけなんです。それでも、商品は非常に売れています。今のうちから、「セルフプロモーション」という自分を売り込む方法を学び、他人からいわれなき攻撃を受けたときに精神的に参らないようにする訓練をしているといいと思います。

マンガ学科

世界で注目される日本のマンガを推進する力を育成。

"マンガ"は、日本のコンテンツ産業の中心的存在で、広がりと歴史を持つキャラクター表現です。また、中学・高等学校の学習指導要領(美術)でも扱う対象とされているように、現代の視覚表現としても注目されています。本学科は、マンガをはじめキャラクター表現について、一般の美術系大学にはない専門性と実績を持ち、幅広く人材を育成しています。