足跡

2018.2.2

地域の魅力をマンガで発見『小田原寄木日和』

「芸術学部卒業・大学院修了制作展2017」スペシャルインタビュー
マンガ学科マンガ研究・編集細萱敦研究室 高橋真由さん

タイトルにもこだわりました。

マンガの中でも紹介されている小田原駅にある寄木細工のベンチ。高橋さんが資料用に撮影

2017年の「芸術学部卒業・大学院修了制作展」、マンガ学科の展示室に沢山の作品が並ぶ中、わかりやすいタイトルで目をひいたのが高橋真由さんの作品「小田原寄木日和(おだわらよせぎびより)」でした。「小田原」は神奈川県の小田原市、古くは城下町として栄え、南は相模湾に面し、隣町は温泉街としても有名な箱根町です。そのため、現在でも、観光地としても有名な街です。「寄木」は小田原と箱根の伝統工芸品である寄木細工のこと。写真のベンチのように木の色で表現された美しい模様が特長です。タイトルから小田原を舞台に寄木細工について描かれている作品ではないかと想像しました。

実際の作品も、小田原に住む高校生が、授業の課題で自分の住む地域特有のものを調査することになり、その題材に寄木細工を選び取材して歩くというもの。高橋さんに、タイトルへのこだわりを教えていただけました。「小田原」という街や「寄木細工」に興味がある人はもしかしたら多くはないかもしれないけど、興味を持ってくれる人には確実に手に取ってもらいたいという思いから、「小田原寄木日和」と両方の名前を入れることにしたそうです。

題材が引き立つよう主人公は普通の高校生に

キャラクター案。普通の高校生をどのように表現するか苦心しました

高橋さんは舞台である小田原育ちです。自分の住んでいる周辺地域を舞台にした作品にしようと考えたのは、卒業制作のアイディアを考え始めたときから。当初は箱根の山を舞台にしたファンタジーなども考えていました。けれど、地元の友人との会話で寄木細工の話が出たことから、自分の住む小田原や寄木細工の魅力を伝えるようなマンガを描きたいと思うようになりました。そして、寄木細工そのものを題材に、自分の住む地域の魅力を伝えるようなマンガを描くことに決めました。

登場人物は、寄木細工の体験教室や販売店で取材しながら、ゆっくりと考えていきました。今回は寄木細工がしっかり目立つように主人公を「普通の」高校生にしました。今まではキャラクターを前面に出した作品を制作することが多かったので、「普通の高校生はどんな風だろう…」と苦心しながら、髪型や制服、性格などのアイディアを出した結果、しっかりとした女の子、元気のいい男の子の二人の主人公ができあがりました。

教授が背中を押してくれた

高橋さんが所属するマンガ研究・編集研究室の細萱敦教授は、マンガの研究者として海外のマンガの紹介などもされています。そして、研究室の雰囲気は、卒業制作として小説などマンガ以外の表現をする学生もいて自由。学園もの、ファンタジーなどではなく、地域の魅力を伝えるマンガを描こうと思い立ったのは、そんな自由な雰囲気と、地域に根ざしたマンガの立案などもされている細萱教授の影響が少なからずあるそうです。

細萱教授は、知識や実践的なことだけでなく精神的な面でも背中を押してくれる存在でした。心配性の高橋さんは、制作中に「このカットの主人公の顔が他と繋がらないのでは」などと細かいところが気になってしまうことがありました。そんなとき、細萱教授に「いや、繋がるよ。大丈夫」と励まされました。一つの作品を作り上げる作業は孤独でくじけてしまうこともあります。教授が励まし、指導してくれるおかげで、最後までやり遂げることができました。

近年、ビジネス書のマンガ化や広告など、マンガ表現は若者だけでなく、幅広い世代で受け入れられています。マンガで表現することで親しみやすく、伝わりやすくなるためです。高橋さんの作品「小田原寄木日和」のように、伝統工芸品や地域の魅力を伝える手段としても期待できます。

作品制作に煮詰まったら小田原城など名所を散歩してリフレッシュしたという高橋さん。主人公の高校生と同じように、自分の住んでいる地域を満喫し、魅力を発見していきました。「この作品で少しは育った地域に恩返しできたように思います」

マンガ学科

世界で注目される日本のマンガを推進する力を育成。

"マンガ"は、日本のコンテンツ産業の中心的存在で、広がりと歴史を持つキャラクター表現です。また、中学・高等学校の学習指導要領(美術)でも扱う対象とされているように、現代の視覚表現としても注目されています。本学科は、マンガをはじめキャラクター表現について、一般の美術系大学にはない専門性と実績を持ち、幅広く人材を育成しています。