足跡

2018.9.5

観客と映画を繋げる存在になりたい『共に育みし、町の映画館』

「芸術学部卒業・大学院修了制作展2018」スペシャルインタビュー
映像学科 映像技術研究室:佐藤渚彩さん

町の映画館「深谷シネマ」

佐藤さんの制作した約20分のドキュメンタリー作品『共に育みし、町の映画館』は埼玉県深谷市にあるミニシアター「深谷シネマ」を題材にしています。「県北にミニシアターを!」という市民の声により2002年に誕生した「深谷シネマ」。2010年には「七ッ梅酒造跡」に移転し日本で唯一の「酒蔵の映画館」として営業を続けています。

作品では、インタビューや過去の映像を織り交ぜて「深谷シネマ」の歴史や運営について紹介しています。また、「深谷シネマ」の名物となっている手描きの映画看板の制作風景も取材し、一つの映画館に関わる様々な人々の思いを描いています。

卒業制作展の期間中、インタビューの約束の時間前に佐藤さんを訪ねると、たまたま居合わせた映像学科の学生たちが、和気あいあいと話しているところでした。インタビュー記事の撮影場所のアイディアを出してくれたり、先生への交渉に走ってくれたり、「マネージャーみたい」と冗談を言いながら思わず笑ってしまう仲の良さ。「一緒に自主映画を制作した仲間なんです」と佐藤さん。映像学科の仲間とフィクション作品を作ってきた佐藤さんが、ドキュメンタリー作品を制作したのはこの『共に育みし、町の映画館』が初めての経験です。どうしてフィクションではなくドキュメンタリーだったのか?佐藤さんがこの作品に込めた思いについて伺いました。

熱中した自主映画制作とアルバイト

卒業前に仲間と企画した映画祭のポスター

映像学科の学生は、大学の課題の制作だけでなく、学生だけで自主的に映画を制作することがあります。佐藤さんの学年は特に仲が良く、フィクションの自主映画作品を量産してきました。自主制作作品は自分たちで上映をしない限り、なかなか人の目に触れる機会がありません。そのため、作品が完成すると完成試写会を開いていました。試写会では、様々な感想が聞け、刺激をうけます。佐藤さんは次第に映画を作ることだけでなく、観る人の反応を感じられる試写会も楽しみになってきました。

映画の上映に興味をもったもう一つのきっかけは、厚木市にあるミニシアターでのアルバイト。その映画館は、観客のアンケートをもとに上映作品を決める、上映前にスタッフが作品紹介をするなど、大手のシネコン(複合映画館)とは違うスタイルで運営しています。 仕事を通じて、映画館という場所のあり方について、観客や地域との繋がりについて考えるようになりました。

3年生に進級するにあたり選択した研究室は百束朋浩准教授の映像技術研究室。CMやドラマ、情報番組、バラエティ、ドキュメンタリーとテレビで放映される番組を企画・制作する研究室です。映画制作の研究室では、カメラマン志望ならカメラ、助監督志望なら演出とそれぞれの専門技術を磨いています。すでに、制作ではなく上映に惹かれ始めていた佐藤さんはもっと広く映像に関わりたいと、企画から編集まで一貫して担当できる映像技術研究室を選びました。

観客と映画を繋げる存在になりたい

映像技術研究室では、グループ制作で情報番組を卒業制作作品として企画していました。その一方で、佐藤さんは個人的にどうしてもやりたいことがありました。それは地域に根ざしたミニシアターを取材すること。百束准教授も企画書を一目見て「やってごらん」と背中を押してくれ、グループ制作や就職活動が一段落ついた7月上旬、本格的に動き始めることができました。

ミニシアターの取材ならアルバイト先の厚木の映画館でも良さそうです。しかし、「それでは主観が入ってしまう」という気持ちと他の映画館も見てみたいという好奇心から別の取材先を探すことにしました。深谷シネマに惹かれたのは酒蔵の映画館という面白さから。映画館へ企画書を提出し、許可を頂き、スタッフ集めをしました。「ひとりで取材することになってもいい」と思っていましたが、3日間の撮影に最大4名のメンバーで動くことができました。自主映画仲間の学生がカメラを担当してくれたおかげで、レトロな映画館の雰囲気を映画のように美しく撮影することができました。

佐藤さんは、取材をすすめているうちに、深谷シネマの館長の思いと、アルバイト先の映画館の館長の思いの共通点に気がつきました。作品と観客とを繋ぐ最前線にいるという自負心。すでに映画館運営会社への就職を決めていた佐藤さんにとって、その思いは深く胸にしみました。

将来の夢は、日本の未来に映画館を残す力になること。そして、共に映画制作をした大学の仲間の作品を自分の劇場で上映すること。

「すでに『僕の作品を上映してよ』って声をかけてくれた人もいるんですよ」と微笑みながら話していました。

映像学科

あらゆる映像領域をゼロから広く学ぶ。専門性を磨き、業界をリードする人材になる。

今、身の回りには映像があふれており、感動を与えられたり、感性を刺激されたりしています。その中で「映像で何かを表現したい」「映像の世界で活躍したい」と、映像に興味を持った人がゼロから学び、真の映像人になれる点が本学科の特徴です。映像を多角的に学び、都内屈指の最新設備・機器で映像を制作し、業界をリードできる人材を育てます。