足跡

2018.9.4

インターネットでの出会いを活かす『Rosetta』

「芸術学部卒業・大学院修了制作展2018」スペシャルインタビュー
アニメーション学科 橋本研究室 石塚理央さん

残酷な物語の美しさ

石塚理央さんの制作した作品『Rosetta』(ロゼッタ)。タイトルはヒロインの名前です。中世ヨーロッパのような架空の国が舞台で平民、貴族の身分の差がある世界を描いています。貴族の女の子アリアへの身分違いの恋に悩む幼なじみの男の子セリシオ。二人の関係は、アリアの父親から反対されています。それを横で悲しそうに見つめるロゼッタ。実は、彼女もセリシオの事が好きなのです。「伝説の薔薇の髪飾りを見つけない限り結婚は認めない。」とアリアの父親から伝えられ、必死に探すセリシオ。しかし、それはどこにあるのかもわかりません。

ロゼッタはセリシオに愛を告白するも拒否されてしまい、魔女に「貴女を伝説の薔薇の髪飾りに変身させてあげよう。人々の記憶から消えてしまうが、それを身につけた人の心を乗っ取ることができる」とそそのかされてしまったロゼッタは、自分の命を捨て、その伝説の髪飾りに変身する決心をします。

魔法により幼なじみであるロゼッタの記憶を無くしたセリシオは、愛するアリアと結婚することができました。しかし、伝説の髪飾りをつけたアリアの心、はロゼッタに乗っ取られているのです……

アニメーションは登場人物の行動や会話だけでなく、女性ボーカルの歌で語られる箇所があり、そのドラマチックな旋律が、ヨーロッパのおとぎ話のような少し残酷な物語を盛り上げてくれます。

「儚いとか、悲しいというところに美しさを感じるところが私自身にあって、それを表現したいと思って作りました」と語る石塚さん。できあがった作品は、しっかりとした世界観があると高い評価を受けました。

後輩に手伝いを頼んだときの資料

制作にあたっては高校時代の仲間に声優を頼んだり、後輩にセル塗りの一部を頼むなど、作品のクオリティを高くする努力をしました。なかでも、作中で印象的な歌やBGMの作詞・作曲は、以前から交流があった作曲家の方に、制作を始める前から依頼していたそうです。

インターネットでの出会いを活かす。

作曲を担当したのはゲームのBGMなどを制作しているプロの作曲家Sound’s Libraryさん(※普段は、別の名義で活動されています)です。出会いは石塚さんの中学時代まで遡ります。中学生の石塚さんがイラストレーションの投稿サイトに掲載していた絵をSound’s Libraryさんが「音楽動画に使っていいですか」と打診したことが出会いのきっかけ。そのときは絵を提供してそれっきりになってしまいましたが、石塚さんが高校生になってから、今度は「こんな絵を描いてほしい」という依頼が来るようになりました。そしてコラボレーションをするようになりました。

石塚さんは、Sound’s Libraryさんとは、ネット越しのお付き合いだけでお会いしたことはありませんでしたが、いつか自分で制作したアニメーションに音楽をつけてほしいと考えていました。そして、大学3年生の10月、Sound’s Libraryさんが仕事で東京に来ることを知り、初めて直接お会いして卒業制作に協力してもらうことをお願いしました。

石塚さんは4年生になると、プロットをもとに「登場人物のセリフ」のシーンや「歌で説明したい」シーンを決めました。8月には絵コンテとほしい曲リストをお渡しし、できあがった曲を元に絵コンテを描き直し、絵コンテにあわせて曲の長さを変えてもらう作業を繰り返しました。できあがった曲にあわせて後からアニメーションをつけ足すといった作り方は、分業が進んだプロの現場ではあまり行われないそうです。個人制作、卒業制作といった制作だからこそできた作り方です。

石塚さんは、就職活動でもインターネットでの出会いを活かしました。就職活動用ポートフォリオサイトに掲載していた作品を見た映像制作会社から声がかかり、就職が決まったのです。イラストレーションとコンテが描けるといった能力が評価されました。すでに、ホームページも運営し、イラストレーターとして活動していた石塚さんは、その活動を辞めたくないといった思いがあり、面接では「副業は大丈夫ですか?」と確認し、認めていただけたそうです。今後は会社員と並行してイラストレーター活動も続ける予定とのことです。

大学だからできたこと

自分でホームページを運営したり、インターネットで出会った人とのコラボレーションや、ポートフォリオサイトを活かした就職活動と、インターネットを上手く活用している石塚さん。独立心があり、大学でも「基本的には好きなように一人で突っ走っていた」と言います。

アニメーション学科では通常、1、2年生で基礎を学び、3年生になると自身の課題にマッチした研究室を選択し、卒業までその研究室に所属します。しかし、石塚さんは4年生になるタイミングで研究室を変更しました。「3年生はその時の課題の内容で研究室を選択しましたが、4年生に進級する際、自分の卒業制作のテーマにあった研究室に移ることにしました」

卒業制作では音楽にあわせたアニメーションを作ることを考えていたので、作曲や音響制作をされている橋本裕充助教の研究室に所属を変更しました。「橋本先生には、音楽のフェイドの仕方やセリフと音楽との合わせ方などを指導していただきました。」

イラストレーション等幅広く色々なものへ興味がある石塚さんが進学先としてアニメーション学科を選択したのは、他のジャンルに比べるとアニメーションは学校に行かないとわからない事が多いと思ったからだそうです。ただ、最近は独学でアニメーションを学べる環境も整ってきています。今は、自分でなんでもできる時代になってきましたが石塚さんは大学で学んできたことは意味があったと考えています。例えば「映画概論」や「西洋美術」というような基礎教養の授業。独学だと自分の興味のあるものしか学びませんが、大学だと基礎教養等幅広い科目を履修する必要があります。そうして学んだことが、作品の幅を広げてくれます。

石塚さんの将来の夢は、イラストレーションも映像も幅広く扱えるクリエーターです。自分らしい働き方で活躍している姿が思い浮かびます。

アニメーション学科

日本の4年制大学で初めて設置されたアニメーションを多角的に学べる学科。

日本アニメーションの世界への拡大、そして進化をいち早く察知し、他大学に先駆けて誕生したのが本学のアニメーション学科です。コンテンツ産業として、まだまだ拡大の可能性が期待されているアニメーション界を担う、コンテンツクリエイターの育成を行っています。アニメーターのみならず、幅広い産業界に活躍の場を広げていることも特徴です。

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