足跡

2019.1.24

同級生たちを訪ねて『7年のときを経て』

「芸術学部卒業・大学院修了制作展2018」スペシャルインタビュー
写真学科 上田研究室(肖像写真)細野 彩音さん

人と触れ合うのが好き

19人のリラックスした表情が印象的なモノクロのポートレート(肖像写真)を制作した細野彩音さん。「この写真は細野さんじゃないと撮れない距離感と表情、そして、地元愛と人間愛だ」と高い評価を得ました。

自然体な雰囲気が魅力的な細野さんは、「人と触れ合うのが好き」だと言います。人物の写真を撮りたいと写真学科の上田研究室(肖像写真)に入りました。細野さんが考えるポートレートの面白さは、それと全く同じ瞬間は一生訪れない、そんな瞬間の表情を切り取れること。とりわけ、その人の楽しそうな表情を撮るのが好きで、撮影した写真を自分で見返すことも、被写体になってくれた人が写真を見て喜ぶ顔を見ることも楽しみです。

今回、自然な表情を引き出せたのは、そんな細野さん自身の性格だけでなく、モデルになってくれた同級生達との関係も大きいのだと細野さんは言います。

家族のような同級生

細野さんの生まれ育った清川村は人口約3000人の神奈川県唯一の村。東京工芸大学のキャンパスがある厚木市に隣接しています。細野さんの同級生は25人。幼稚園から中学を卒業するまで皆が1つのクラスで育ちました。そのため、家族の次に親しい存在です。例えば、誰かが荒れていても、「今イライラしているんだ。そっとしてあげよう」と皆で目配せし、やり過ごすことができる。お互いが普段の性格を理解し合っているので、誰かを「嫌なやつだ」と言って、喧嘩や仲間割れに発展することは皆無でした。

細野さんは中学校を卒業した後、進学した高校や大学でも親しい友人ができましたが、「私は友達だと思っていても相手はそう思っていないかもしれない」と考えてしまい、25人の同級生ほど安心できる関係ではありませんでした。

大学4年生の4月、現在も清川村に住む細野さんは、卒業制作について考えているときに、バスの中で同級生の1人と偶然再会しました。色々と話しているうちに、今回の作品テーマを思いつきました。「中学卒業から7年後の同級生の姿を撮影する。撮影を口実に皆に会いたい」

細野さんは4月中には一人ひとりにLINEでメッセージを送り、撮影の了承をもらった18名と、清川村にあるそれぞれの思い出の場所で写真撮影を始めました。作品は、細野さん自身の写真も入れて19枚で構成されています。

制作は、フィルムカメラでの撮影、暗室での手焼きに細野さんはこだわりました。大学でのこれまでの課題はデジタルを選択することもありましたが、「卒業したら暗室に入ることもなくなる」「現像する人の個性が出る手焼きにしてみたい」という気持ちからモノクロのシルバーゼラチンプリントにチャレンジすることにしましたと言います。

春から少しずつ始めた撮影は、村外に出た同級生が帰省する8月が最も忙しくなりました。モデルをつとめてくれた友人の中にはすでに結婚して子供がいる人もいましたが、ほとんどの友人が大学4年生で、就職活動をしていました。細野さん自身も就職活動で苦労していたので、皆の話を聞いて「私もがんばろう」と励まされたと言います。

フィルムカメラは、その場で撮った写真を確認できないので、「思ったような表情が撮れなかった」等の理由で、後日再撮影をお願いすることもあったと言います。春から始めたものの、満足のいく写真を撮り終えるには冬までかかりました。

子供のころの「閃き」がきっかけ?

今回の撮影を振り返って、同級生は皆、根本的な性格は変わっていないことがわかりました。けれど、小学校の頃に聞いた将来の夢を叶えている子がいたり、新しく趣味をみつけてその世界で頑張っていたり、新たな魅力が加わっていたのが印象的。写真のモデルにもなってくれた一番の親友からも、「小さい頃からずっと一緒だったみんなが、面影を残しつつ大人になっていて不思議な感じがしました。みんなの笑顔は幼い頃と変わらず暖かかったです。また10年後写真とってほしいな」という感想をもらいました。

細野さんの写真との出会いは、小学生の頃、東京工芸大学が地元の子どもたち向けに毎年企画している体験イベント「わくわくKOUGEIランド」に、前出の親友と行ったことがきっかけです。そのとき、写真学科が主催する体験授業を経験。写真学科の写真や暗室に惹かれた細野さんは「将来はこの大学に入る」と宣言したそうです。「将来はカメラマンになるとか全然考えていなかったので、不思議なんですよね」と細野さんは言います。将来の夢は幼稚園の先生だった細野さんでしたが、子供時代の「閃き」の通りに東京工芸大学の写真学科に進学しました。

そして、卒業後は子どもと触れ合えるキッズの撮影が中心の写真スタジオへの就職が決まっているそうです。「幼稚園の先生」と「写真」両方の夢が叶ったような気分だと細野さんは言います。
「今回の卒業制作では親しい友人の魅力を引き出すポートレートを制作しましたが、これからは初めて会う子どもたちの撮影なので少し緊張しています。子どもたちの自然な笑顔を引き出せるよう、試行錯誤の毎日が始まります」

写真学科

実践的な教育が写真に関わる全ての仕事で通用する真のプロを育てる。

1923年創立の「小西写真専門学校」をルーツとする本学科は、日本で最も長い歴史と伝統を誇る写真教育機関です。90年以上の歴史の中で培われた教育ノウハウは、他校の追随を許しません。写真技術だけでなく芸術分野の専門科目を学ぶことで総合力を習得。写真に関わるあらゆる領域で活躍できる真のプロフェッショナルを育てます。