研究

2020.4.13

フィールドに立って「被写体の声を聞け」

芸術学部 写真学科 
田中 仁 教授 Hitoshi Tanaka
フィールドワーク研究室

教員プロフィール

1957年青森市生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業。京都造形芸術大学大学院芸術研究科修士課程修了。京都造形芸術大学専任講師、准教授を経て、2015年本学に着任。 写真制作、写真家研究、写真教育を専攻分野とする。主な個展:「JL777/JL778」「Weather」「WaterII」等。主な著書:「写真集/雲母へ。」「写真:技法と表現」(共著)「現代写真のリアリティ」(共著)。日本映像学会会員、日本写真協会会員、日本写真芸術学会理事/副会長。

8×10の大型カメラでフィルム撮影

今はデジタル全盛の時代。デジカメ、スマートフォンの普及により、写真は誰でも簡単に撮影できる時代になっています。しかし、若い学生の中には大量に撮影したデジタルデータの中から作品として発表する写真を選べない人がいます。これは「何を撮りたいか」「何を目的にしているか」が不明確だからです。「写真が写ってしまっている」「カメラに撮らされている」と言ってもいいでしょう。この研究室では写真の原点に立ち返り「何を撮るか」「どう撮るか」を身に着ける実習を行っています。具体的には3年次の前期は暗室実習を行い、3年次の後期と4年次は、8×10や4×5の大型カメラを持って撮影現場に行き、フィルムで撮影を行います。大型カメラは操作が難しく、フィルムは値段が高いので、一人が一日に撮影できるのは1枚か2枚です。その1枚のために遠くまで出かけて行き、魂をこめた撮影を行うのです。

「考える」こと「感じる」こと

学生たちにはいつも「被写体の声を聞け」と言っています。どんな撮影現場でも被写体は必ず「声」を発しています。その声を聞き取ることが大切なのです。それは「考える」とともに、直感で「感じる」こと。フィールドに立ち、被写体の声を聞き取ってフィルムに収める。こうした経験は写真で生きていく人間には必ず必要になっていきます。オーソドックスな授業スタイルを貫いていますが、その成果もあってゼミを開設してから就職率は常に100%です。そして、この研究室では海外からの留学生が多いのも特徴です。海外の写真を教えている学校では、すべての実習をデジタルに切り替え、フィルム写真の教育を行っていないのが現状です。留学生たちは自国では学ぶことが出来ない大型カメラによるフィルムでの撮影に魅力を感じているようです。彼らは「自分が何を学ぶべきか」をよく理解していると思います。

写真教育で100年の歴史を持つ東京工芸大学だからこそ

よく保護者の方から「写真を生涯の仕事にするのは難しいのでは?」と質問を受けることがありますが、そんなことはありません。どんなに時代が変わっても世の中は質の高い写真を必要としています。報道、コマーシャル、ブライダルなどの現場では常に優秀なカメラマンを求めています。写真を専門に教える教育機関が少なくなった中で、大正12年に小西写真専門学校として建学した本学は、100年に及ぶ長い写真教育の歴史を持っています。写真の業界では高い評価を得ているのが東京工芸大学の写真学科です。就職では学校指定で本学の学生を優先して採用しようとする企業が数多くあります。長い歴史の中で先輩方が築き上げてきた信頼によって現在の写真学科があるのです。その信頼を未来につなげていくためにも優秀な写真家を育てていきたいと思っています。

※所属・職名等は取材時のものです。

写真学科

実践的な教育が写真に関わる全ての仕事で通用する真のプロを育てる。

1923年創立の「小西写真専門学校」をルーツとする本学科は、日本で最も長い歴史と伝統を誇る写真教育機関です。90年以上の歴史の中で培われた教育ノウハウは、他校の追随を許しません。写真技術だけでなく芸術分野の専門科目を学ぶことで総合力を習得。写真に関わるあらゆる領域で活躍できる真のプロフェッショナルを育てます。