足跡

2017.9.28

今、自分ができることを詰め込んだ『宇宙の片すみで』

2017年卒業制作展スペシャルインタビュー
アニメーション学科細川研究室:金井千夏さん

2017年の「芸術学部卒業・大学院修了制作展」で印象に残った作品の制作者へのインタビュー。
アニメーション学科、金井千夏さんの卒業制作作品『宇宙の片すみで』は、小道具や美術が立体アニメーション、登場人物がデジタル作画で作成されています。

水槽用の砂で作られた星

少年宇宙飛行士とロボット犬が小さな星の上で走っている。少年と犬はいわゆる二次元のアニメーションですが、星は水槽用の砂で作られたもの。

『宇宙の片すみで』は、3年生のとき、天国に旅立ってしまった愛犬を自分の作品で生き返らせたいという気持ちから作り上げた物語。「今を大切にすること」がテーマの作品です。宇宙を孤独に旅する少年宇宙飛行士。操縦する小型ロケットの助手席にのせた蓄音機から流れる、おばあちゃんと聞いた思い出の曲だけが心の支え。降りたった星も荒廃して人の姿は見えません。そこで唯一、出会ったロボット犬もたった一匹で孤独に生きていました。そのため、すぐに仲良しになった一人と一匹。しかし、少年のロケット着陸の衝撃が影響をあたえ、もともと劣化していた星は崩れはじめてしまいます。すぐに飛びたたなければならない少年はロボット犬を小さなロケットに乗せるために蓄音機を置いていくか選択を迫られます。

荒廃した宇宙のはずなのに可愛らしいキャラクターが動き回り、優しい気分になる不思議な世界…その作品を制作した金井さん自身も、アニメーションを見た印象と同じように優しい雰囲気の女性でした。

3度目のチャレンジ

絵コンテやキャラクター案。

絵を描くことが好きで、高校の産業デザイン科で設計やデザインを学んでいたという金井さんは、そのときに一度、立体アニメーションと作画の組み合わせのアニメーション制作に取り組んだことがありました。でもそのときは、自分がやりたいことをただ詰め込んだだけでごちゃごちゃとした仕上がりになってしまいました。

そして再び、大学3年生のときにゼミの制作で同級生と二人で背景立体と作画を組み合わせた作品にチャレンジしたそうです。他の人がやらない技法で作るのは苦労も多かったものの、平面と立体を組み合わせたときの相容れないものがうまく交わっている画面がとても気に入って、卒業制作でもこの技法でいこうと決めました。

グループ制作も選ぶことができる卒業制作ですが、金井さんは一人での制作を決意しました。自分のできることを追求したかったからです。しかしその分、作業量は膨大です。3年生のときは紙で作画していたのですが、紙の汚れを取り除く事やスキャン作業の省略のために、パソコンによるデジタル作画に変更するなど、一人でもやりたい事を達成できる方法を模索しました。

立体を作る事が好き

立体アニメーションで使用した立体物。少年が乗っていた宇宙船や思い出の蓄音機、着陸した星にあった小屋など。

金井さんの趣味はフィギア作り。今回の作品の立体物の制作でも、粘土や木材といった素材の選択などフィギア作りの知識が活かされています。
少ない時間でたくさん作る大変さはあるものの、好きな事なので楽しんで取り組めました。「立体物を作ると物への理解が深まって、その経験がアニメーションの作画にも活かせるんですよね」と金井さん。

立体物への興味から、立体アニメーションの作家でもある細川晋助教のゼミで学びました。立体アニメーションとは『チェブラーシカ』や『コララインとボタンの魔女3D』『ピングー』『ウォレスとグルミット』など、粘土(クレイ)人形(パペット)を用いてストップモーション(コマ撮り)で作られたアニメーションの総称です。
3年生での立体アニメーション制作の経験は、卒業制作の際にもどう撮影したらいいかなどの判断につながりました。それでも、今まで作画メインで制作していたのでわからない事も多く、その都度、細川先生に教えていただきながら撮影を続ける事ができました。

大学時代の代表作

「今までの作品は至らない所が目について他の人に見せることにためらいがあったのですが、今回の作品は、大学時代の作品と自信を持って言える作品になりました」と金井さん。やりたい事をただ闇雲に詰め込んだ高校時代と違い、多くを学び、「自分にできる事」を最大限に活かした達成感があります。できあがった作品への高い評価も素直に喜ぶ事ができました。

卒業した現在は、アニメーターの卵としてデジタル作画の研修中。毎日ひたすら単純な線を描く訓練をしています。プロの世界は線の美しさ、描く速さなど、大学生とは比べものにならないスキルが要求されるため、ひたすら線を描くような訓練も「早く先輩方に追いつきたい」という気持ちで打ち込めます。

一方で、「学生時代に自分で何かを作った経験がある人はアニメーターとして後々伸びる」とも先輩方から言われるそうです。アニメーション制作の現場では、一つの作品を自分一人の力で作り上げることはできません。職人として早く美しく仕上げるのも大切ですが、自分の力で全部を最後まで作り上げた経験がある人は、後々アイディアを出したり、次のステップに行く時にその経験が活かされていくのです。

大学時代の経験とこれから身につけていく知識や技術を武器に、アニメーターとしてしなやかに活躍されることを応援しています。

※インタビューは2017年4月に行われました。

宇宙の片すみで 金井千夏

学科名
アニメーション学科
学年
4年生
所属研究室
細川研究室
制作年度
2017年
作品ジャンル
(素材)
2Dデジタル作画アニメーション
ストップモーションアニメーション

「今を大切にする」お話。大学で学んだことをたくさん詰めた作品にしました。
ロボ犬の作画は3年生の時に天国に旅立った愛犬としぐさが自然と似ていって、懐かしい気持ちで描きました。

アニメーション学科

日本の4年制大学で初めて設置されたアニメーションを多角的に学べる学科。

日本アニメーションの世界への拡大、そして進化をいち早く察知し、他大学に先駆けて誕生したのが本学のアニメーション学科です。コンテンツ産業として、まだまだ拡大の可能性が期待されているアニメーション界を担う、コンテンツクリエイターの育成を行っています。アニメーターのみならず、幅広い産業界に活躍の場を広げていることも特徴です。