足跡

2017.6.23

自分らしさとデザインをつなげた『イスの反抗』

2017年卒業制作展スペシャルインタビュー
デザイン学科プロダクトデザイン研究室:林健太さん

2017年の「芸術学部卒業・大学院修了制作展」で印象に残った作品の制作者へのインタビュー。デザイン学科プロダクトデザイン研究室の林健太さんは5つの白い椅子を制作しました。白い普通のイスと変型した4つのイス。卒業後はプロダクトデザイン以外の道に進むことが決定している林さんの作品にかける思いと就職を決めた経緯を聞きました。

イスの反抗

白いなんでもないイス。人は正しく座ってくれません。そこでイスは4つの姿に生まれ変わりました。人々の癖通りにしか座れなくしてしまったのです。

デザイン学科の林健太さんの作品は、そんなテーマで制作されました。
1つ目、イスの前の脚は宙に浮かせて後ろ脚だけで支えなければいけません。
2つ目、座面の前方に障害物を設け、脚を組まないと座れなくなっています。
3つ目、前方にも背もたれがあり、前と後ろがわからなくなっています。背もたれに腕をのせて座るようになっています。
4つ目、座面には穴が空いており、座れません。代わりに背もたれに小さな座面があります。

卒業展で、イスを見た人々は「確かに背もたれに座っちゃうんだよね」「私は足を組むかな〜」と自分の座り癖を語り合っていました。

プロダクトデザイナーを目指したけど

卒業展で好評だった『イスの反抗』。しかし、林さんは、卒業制作までの大学の課題ではなかなか満足いく結果を残せませんでした。「アイディアは褒められるんです。でも、それをもっと展開したり細かいところまでこだわることがなかなかできなくって…」

絵を描くことが好きだった林さんは、プロダクトデザイナーであったお父様に憧れて、デザイン学科のプロダクトデザイン研究室に入りました。プロダクトデザイナーは、家電や車、文房具など私たちの生活を支える製品をデザインします。そのため、アイディアだけでなく、「より機能的にするにはどうしたらいいのか」「この不便を解決する方法はないか」など細かいところまで気をくばったデザインが求められる世界です。

入学した当初から、見た人の感情を動かせる面白い作品を作りたい、人を楽しませたいと思っていた林さんは、実用性や機能性が求められるプロダクトデザインの世界で認められ、なおかつ自分も満足できる作品をなかなか作り上げることができず苦労しました。

「イスの反抗」も機能的とは言い難い作品です。しかし、先生からは「人間観察ができている」と高評価をもらいました。「自分のやりたい事をやって初めて認められた作品です」と林さん。卒業作品の案を色々と出しているときに、一つの案に「姿勢が変えられなくて不便。逆に新しい(笑)」と嫌味っぽい指摘を受けたところから、逆に不便さを楽しめるようにすればいいのでは?と考えました。そして、周りの人の座っている姿を観察してくうちに「イスの反抗」のテーマが思い浮かびました。人間観察をする事で、単純にかっこいいデザインではなく、もう一歩進んで、座ることについて、人々が考えたり、語り合う事を促す存在にもなりました。人を楽しませたいという林さんの思いとデザインがつながりました。

大学での学びも活かし新しい夢の実現へ

林さんは大学時代、デザインの勉強だけでなく、バスケットボールやジャグリングなどの様々な活動に熱中していました。中でも特に熱中した事がダーツでした。スカウトされてプロのインストラクターになるほど。大学の学内企業説明会でダーツ専門のエンターテイメント会社の存在を知り、受験し、見事就職を決めました。ダーツイベントの企画など、ダーツの普及活動を行う予定です。そして、プロの選手としても日本一を目指しています。

大学入学時に目指していたプロダクトデザイナーとは別の仕事についた林さん、けれど大学での学びは無駄でなかったと言います。

「ただダーツが好きで趣味を仕事にしたと思われがちですが、大学で学んだアイディア出しから制作までの過程やプレゼン能力とダーツの知識が合わさることで開発職、企画職として自分にしかできないものが作れると思っています」

イスの反抗 林健太

学科名
デザイン学科
学年
4年生
所属研究室
プロダクトデザイン研究室
制作年度
2017年
作品ジャンル
(素材)
木材(パイン材)

このイスは意思を持つ。
様々な姿勢で自由に使われたイスは、形を変えて人間へ反抗する。変形したイスは座り方が限定され、姿勢を変えることはできない。