足跡

2017.6.24

空想上の生物を絵巻物に『変怪図譜絵巻』

2017年卒業制作展スペシャルインタビュー
マンガ学科カートゥーン チョン・インキョン研究室:野地瑞恵さん

2017年の「芸術学部卒業・大学院修了制作展」で印象に残った作品の制作者へのインタビュー。マンガ学科の野地瑞恵さんは3巻の絵巻物を制作しました。絵巻物は縦27.5㎝で長さは7mから一番長いもので10mに及びます。野地さんが絵巻物を描いた理由や制作時に苦心したことを伺いました。

沢山の空想生物が出てくる絵巻物の世界

卒業作品展で展示された絵巻物。「にせさんごへび」サンゴが背中についているヘビが描かれています。

野地瑞恵さんの卒業作品『変怪図譜絵巻』は、実在する生物の名前から新たな姿を想像して描いた、空想生物をテーマにした3巻の絵巻物です。描かれている空想生物は全巻あわせて75種類。例えば、「皇帝ペンギン」なら皇帝の姿をしたペンギン、「だるまわし」はだるまの姿をした鳥のように描かれており、鳥や動物、魚、虫など様々な生物が妖怪のような新たな姿に変身して表現されています。

実は、野地さんが絵巻物を制作したのはこれが二回目。一回目は高校生の時、日本的な世界観が好きな野地さんは、新聞で『百鬼夜行絵巻』の存在を知り、こんな作品を作ってみたいと思ったのがきっかけです。『百鬼夜行絵巻』は沢山の妖怪が行進する様子を描いた絵巻物で、室町時代から明治・大正まで様々なパターンで描かれてきたものです。

絵巻物を描くとしても、長い紙なんてどうやって用意したらわからないと思っていました。けれど、ある日ホームセンターで障子の張り替え用のロールペーパーをみて「これを使ったら描けるかも」とひらめき、その時は金魚を題材にした絵巻物を制作しました。

たくさんの種類のキャラクター(『百鬼夜行絵巻』は妖怪、『変怪図譜絵巻』の場合は空想生物)を次々に登場させることができる絵巻物という表現に魅せられた野地さん、大学の卒業制作でもぜひ作りたいと思っていました。風刺マンガなどを研究するチョン・インキョン助教の研究室に入ったのも、いわゆるストーリーマンガではない、絵巻物のような表現も自由にできそうだと思ったからです。今回の絵巻物は、図鑑を眺めているときにひらめきました。

締め切り直前で描き直した

ラフ画。頭にパールがついた「高頭パール」や草花が描かれています。

絵巻物には空想上の生物や季節の植物が描かれています。制作はラフ画でどんな生物や植物を描くかアイディアを出すことから始めます。その後、図鑑で調べたり、動物園や植物園に行き写真を撮って資料集を作り、それを参考にしながら下書きを描きます。そして、アクリル絵の具を霧吹きで吹きつけ質感を出したロールペーパーに下書きを写して完成です。

一巻の途中まで絵巻物に下書きを写し終えた中間報告のとき、「骨の構造がおかしくない?そのポーズはとることができるの?」と先生に言われてしまいました。制作を始めたのが遅かった野地さんは、焦って手を抜いてしまったのだと反省し、「全部、描き直そう」と決意しました。再び調べ直し、一巻の下書きから始める事にしたのです。

そして、できあがった作品は、現実の生物の骨格をモデルに丁寧に描くことを徹底したおかげで、卒業展でも「空想上の生物だけど、見ていて違和感を感じない。一見実在しているように見えるから不思議な気分になる」という感想をもらいました。

「説得力のない絵を描いて、ラクしていると思われたくない。変なところで負けず嫌いなんです」と野地さん。

色んなことに挑戦したい

『変怪図譜絵巻』の制作は短いスケジュールで大変だったため、制作後は、達成感というより解放感が勝っていたという野地さん。けれど、絵を描くことはやめられないと言います。

「姪っ子へのプレゼントで絵本を制作したんです。そのときにすごく喜んでもらって…そういった姿をみると、また絵を描きたいって思います」と、他の人に喜んでもらえるのなら、絵巻物だけでなく、絵本やイラスト、ストーリーマンガ、色んなことに挑戦していきたいそうです。

卒業後は、マンガのキャラクターのアイディアを練りながら、大学でチョン・インキョン助教のアシスタントとして後輩の指導もしています。在校生に混ざって写生をする事もあるそうです。

変怪図譜絵巻 野地瑞恵

学科名
マンガ学科
学年
4年生
所属研究室
カートゥーン(チョン・インキョン)
制作年度
2017年
指導教員
チョン・インキョン
作品ジャンル
(ツール)
紙、インク、朱墨、絵の具(透明水彩、アクリルガッシュ)、SAI

実在する生物の名前から新たに姿を想像し描いた、空想生物をテーマにした絵巻物です。
タイトルの変怪には「変わっている・怪しげ」等の意味があり、絵巻に描かれた妖怪の類に近い生物のことを指してます。

マンガ学科

世界で注目される日本のマンガを推進する力を育成。

"マンガ"は、日本のコンテンツ産業の中心的存在で、広がりと歴史を持つキャラクター表現です。また、中学・高等学校の学習指導要領(美術)でも扱う対象とされているように、現代の視覚表現としても注目されています。本学科は、マンガをはじめキャラクター表現について、一般の美術系大学にはない専門性と実績を持ち、幅広く人材を育成しています。