施設
2024.10.21
国内随一の写真作品コレクションを誇る「写大ギャラリー」の魅力
写大ギャラリーの成り立ち
設立は1975年。本学(当時の東京写真短期大学)の卒業生で、日本を代表する写真家である細江英公が、本学の教授就任にあたって「オリジナル・プリント」を展示・収蔵するギャラリーの設置を提案したことがきっかけです。
オリジナル・プリントとは、写真家自身によってネガなどの原版から制作され、署名などが入れられたプリントのこと。写真家の最終的な表現媒体として、絵画などと同様にオリジナルの作品として扱われます。
当時すでに、海外の美術館などでは、オリジナル・プリントが展示・収集されるようになっていましたが、日本にはまだ、そのような施設はありませんでした。国際的に活躍していた細江は、教育現場にこそ本物の写真を日常的に見せられる場が必要であると主張。そうして誕生した写大ギャラリーは、国内の写真や美術の歴史から見ても先駆的な存在です。
写大ギャラリーという名称は、当ギャラリーが設立当時、「写大」という愛称で呼ばれていたことに由来します。現在、所蔵作品は約14000点にのぼり、年間を通じて気温20度、湿度50%を保つ、写真専用に設計された収蔵庫に保管されています。また、全ての作品がデジタル・アーカイブ化され、学内の図書館などで閲覧できるようになっています。
写大ギャラリー2大コレクション
写大ギャラリーの所蔵作品の中でもとりわけ重要なのが、土門拳コレクションと、森山大道コレクションです。
土門拳は、「古寺巡礼」や「文楽」などの日本の美や伝統文化に関わる作品、「風貌」など著名人のポートレート、「ヒロシマ」や「筑豊のこどもたち」に代表される社会的なテーマを扱った作品など、日本の写真史を語る上で欠かせない昭和の巨匠です。生前に、土門自身の厚意により、1237点のオリジナル・プリントが写大ギャラリーに寄贈されました。
森山大道は、日本を代表する写真家として、1960年より活躍しています。1961年から3年間ほど細江英公の助手を務めており、1976年に、かつての師である細江の呼びかけにより写大ギャラリーで写真展を開催しました。その際に運び込まれた「にっぽん劇場写真帖」や「写真よさようなら」など、1960年代から70年代にかけての森山初期の代表作のプリント約1000点を、展覧会終了後に一括して収集。森山の国際的な評価が高まる中、これらの作品群は世界的に見ても貴重なコレクションと言えます。
2023年より「博物館相当施設」に
写大ギャラリーは、2023年2月10日付で、東京都教育委員会から「博物館相当施設」に指定されました。この申請は、本学創立100周年を契機に、社会貢献や教育の充実、写大ギャラリーの運営体制の安定的維持及び強化を目的として行われたものです。例えば、文化庁の美術品補償制度の活用が可能になったことで、今後はより一層、国内外の優れた写真作品の展示公開がしやすくなりました。
写大ギャラリーは、これからも広く社会教育に貢献し、創造的な写真教育・研究の場としてさらに活動していきます。
写大ギャラリーの展覧会
写大ギャラリーで開催される展覧会は年に4~5回。運営委員長を務める芸術学部写真学科の小林紀晴教授をはじめ、運営委員会の先生方が企画構成に携わっています。
ほぼ毎年春頃には人気の「土門拳展」を、また2~3月頃には、本学学生及び卒業後10年までの卒業生を対象にしたコンペティション「フォックス・タルボット賞の受賞作品展」を開催しています。その他、展覧会に付随するイベントとして、作家によるトークショーや、作家と一緒に作品を見て回るギャラリートークなども行っています。
深尾美希子学芸員からのメッセージ
細江先生は、写大ギャラリー設立についてのお話の中で、実際に目の前でオリジナル作品を見た時、その一枚がどれほど強く心を揺さぶることができるか、すぐれた芸術作品が人の心に訴える偉大な力を持っていることについて言及されています。そんなオリジナル・プリント、国内外を代表する写真家の作品が、身近な所に約14000点もあるということを知っていただくと共に、そうした貴重な作品の数々を、実際に見て、触れて、色々なことを感じていただきたいです。入館は無料ですので、いつでも気軽にお越しください。また、展示作品について知りたいこと、気になることなどがあれば、遠慮なくスタッフにお声かけください。喜んでお答えいたします。
※所属・職名等は取材時のものです。