研究

2019.10.1

人々の「想い」を実現すること それが建築家の仕事

工学部 建築学系 建築コース 
八尾 廣 教授 Hiroshi Yatsuo
建築設計計画研究室

教員プロフィール

1966年大阪生まれ。幼少期に大阪万博の建築物を目の当たりにし、思春期に受けた親戚の建築家の影響もあり建築家を志す。東京大学工学部建築学科卒業。同大学院修士課程より、「京都駅ビル」や「札幌ドーム」を手がける建築家 原広司氏のもとで建築を学ぶ。2005年「八尾廣建築計画事務所」を設立。多くの住宅や建築プロジェクトの設計を手がけ、現在も進行中。建築賞・景観賞など受賞多数。2008年より本学に着任。研究、教育、実践の相互作用により新しい建築の探求を行っている。

「物語」を共に作るよろこび

「中原の家」の外観。江戸時代より代々この地に住む家族のための家。敷地周辺の環境との呼応関係まで意識し、建物を含めた敷地内のランドスケープをトータルにデザインした。 (2018年竣工、撮影:平剛)

建築家の仕事は、単に「もの」としての建築をつくるだけではなく、建て主の「想い」を実現し、人々が共感し愛着を持つ「物語」を作ることだと考えています。そのためには、五感を研ぎ澄まし、周囲の物理的、文化的な環境や人の気持ちなど、あらゆる「気配」に敏感でなくてはいけない。いわば「環境と語り合う感性」が大切です。 建て主と共に「想い」を形にし、様々な課題を乗り越え、ものづくりに関わる全ての人々と共に「物語」を作り上げてゆく。人々の想いをしっかりと環境に根付かせ未来に残してゆくことが、建築家にとって最高の喜びであり、この仕事に携われることを大変幸せに思っています。研究室では実務としての設計を行う私の姿も見せ、やる気のある学生にはプロジェクトに参加してもらうこともあります。ゼミの学生と共に、まちづくりや建築の創作、都市問題への取り組みなど、設計者として「できること」に対して精力的に取り組んでいます。

世界的な視野でアクティブに行動

モンゴル国の首都ウランバートルにて、都市計画不在の居住地の住居改善を目指し、実態調査を継続している。モンゴル科学技術大学と協力し、市当局や国の機関に対して住居改善の手法に関する提言も行なっている。

私の研究室では建築を環境の一部として捉え、建築デザインやまちづくりの研究と実践と共に、海外の都市・住宅に関する研究も進めています。 この9年間、モンゴル国の経済発展により人口の一極集中が進む首都ウランバートルで、人々の住まいに関する研究を継続しています。ここでは様々な住環境問題が発生していますが、同時に新しい定住文化の兆しも見られます。モンゴルにおける現代の住文化を深く理解することで、住宅問題の解決にも繋げようと精力的に研究を行なっています。活動は予想を越えた広がりを見せ、現在はモンゴル科学技術大学や、都市計画、地理学、社会学、文化人類学、植物生態学など日本の異分野の研究者との連携が進んでいます。2017年にはこうした仲間とNPO法人GERを設立し、ウランバートル市やモンゴル国建設都市開発省、国際シンポジウムにおいて住居改善の提言を行なっています。2019年度からは鳥取大学乾燥地研究センターにて、20世紀以降近代モンゴルの歴史と風土、自然環境と都市の変遷を把握する文理の垣根を越えた国際共同研究も始まりました。住居改善の実現に向けてはまだまだこれから多くの山を乗り越えなければなりませんが、数多くの共感を呼び活動が広がっていることに、建築設計者として「できること」の幅の広さを実感するとともに、大きなやりがいを感じています。

2019年のタイ王国での建築都市視察研修の様子。

学生には広い視野を持って建築に対する思考を深めてもらいたいという思いから、ゼミでは毎年、国内外の建築や都市を視察する研修を行なっています。2019年にはゼミの4年生全員と、経済発展の著しいタイ王国にて伝統的建築と現代建築を精力的に見て回りました。また、キャンパスの地元厚木市においては、これからのまちづくりを市の方々と共に考えるワークショップも毎年行なっています。グローバルな視点と地域に根ざしたローカルな視点の両方を養ってもらいたいのです。

ここには自分を奮い立たせてくれる環境がある

東京工芸大学の建築コースには大変刺激に満ちた環境があります。「文部科学省 共同利用・共同研究拠点」に採択され、「風工学」で世界をリードする研究を推進している構造・環境系の教員をはじめとして、建築デザイン分野でも私と同様に建築家として実践を行なっている市原出先生や田村裕希先生のほか、団地再生、ドイツの近代建築史、都市デザインなど、それぞれの分野の教員が多様な研究・制作を精力的に行なっています。それだけではなく、全ての教員が本当に愛情を持って教育にも打ち込んでいます。このような刺激に満ちた環境の中で、学生の間にも自然と高いモチベーションで研究や設計に打ち込む気風が生まれていると思います。みなさんには、広く世界的な視野のもとで日本の優れた建築文化を大いに吸収してほしい。本学の優れた教育環境で広く、深く、建築を学び、世界で活躍する建築家、エンジニアとして羽ばたいてくれることを心より願っています。

建築設計計画Ⅰ研究室

建築を環境の一部として捉え、建築デザインやまちづくりの研究と実践、海外の都市・住宅問題の改善に関する研究を行っている。

  • 研究室詳細
  • 化学・材料コース

    学生一人ひとりの興味に応じた専門分野を学び社会で求められる建築のプロを目指す

    少人数制の設計製図演習、充実した実験設備、そして教員と学生の距離の近さが最大の魅力。建築関連の基礎知識に加え、得意分野に合った専門知識を学ぶことで、建築の専門家を目指します。「建築」「構造」「環境」の3分野のデザインをバランスよく習得できる点も特徴です。