研究

2020.7.17

「水」をテーマに環境を化学する

工学部 総合工学系 化学・材料コース 
大嶋 正人 教授 Masato Oshima
化学総合分析研究室 

教員プロフィール

1964年オーストラリア生まれ、東京育ち。早稲田大学大学院修了。早稲田大学で1年半、東京工業大学で12年間、助手を務める。この間の1年間、エモリー大学(米国ジョージア州)で博士研究員として理論計算化学を応用した研究に従事。2002年本学に着任。有機合成化学や有機金属化学における反応の理論計算による分析を行う。学科名が生命環境化学科になってからは水環境の分析を、2019年からは化学・材料コースで分析化学と化学反応や物性の計算シミュレーションを主な研究テーマにしている。趣味は釣り。環境にやさしい、つまり大漁でない釣りを心がけている。

世界は化学で出来ている

研究室での実習

大学進学を考えている高校生のみなさんには「ぜひ化学を学んでください」と伝えたいです。なぜなら、私たちの身の回りにある品はすべて化学で扱う物質です。そして、世の中のおもしろい事象の大部分は化学反応と物質の性質に由来しています。たとえば、生物の身体の中では多種多様な物質がかかわる複雑な化学反応がバランスよく起き、食物などからエネルギーを得て、生命を維持しています。また、先端技術を駆使して製品化される、スマートフォン、自動車、ロボットなども、使用される軽量な金属、割れにくいプラスティックなどの材料、仕上げに欠かせない塗料などはすべて化学反応によって作り出されるものです。現代社会で問題となっている地球温暖化、オゾン層の破壊などの環境問題やエネルギー問題も、これらにかかわる物質や化学反応を理解することで有効な解決策を提案できるのです。化学反応を操る技術者である化学者は、もとの物質とは性質の異なる新しい物質を作り出せる現代の“魔術師”といっても過言ではありません。未来を創る若者たちにはぜひ化学を学んでほしいと思います。

「分析化学」が地球を守る

研究室メンバー「水質調査隊」専用車両と共に

化学の大きな役割の一つに「今の状態を知る」という「分析化学」があります。かつて人類は水銀や鉛の有害性に気が付かず、大気や河川などの環境中に放出してきました。そのいくつかが現在の環境問題になっています。この研究室では「水」をテーマに主に河川の水質分析を行っています。川は自然の浄化能力によって多くの有害物質を無害化していますが、人間が作り出した化学物質には浄化できなかったり、微量でも悪影響を及ぼす物質もあるので、見届けて対応を考えたいと思います。私たちは、わずかな物質も検出できる「質量スペクトル」装置を使って河川の水から数百種類もの物質を検出し、必要に応じてコンピュータによる反応機構、物性の解析などを行っています。厚木キャンパス周辺は里山、工業地域、農耕地、住居地域などさまざまな地勢がバランスよく点在し、それらの地域を貫くように相模川、中津川、小鮎川が流れているので、水環境の研究を行うには絶好のロケーションです。

大切なのは「気づくこと」と「伝えること」

昼食は研究室メンバーが交代で作り、みんなで食べる

化学の楽しさは分析をして考えること、そして解決策を見つけ出すことです。その過程で重要なのは「気づく」ことです。見過ごしたのでは何も始まらないからです。学生たちには「注意深く観察して『気づく』こと、そして考えたことを伝えられることが大切である」と指導しています。学生たちは自分の興味があるテーマの研究を行なっていますが、いくら良い発見や発明があっても伝わらなければ意味がありません。これは化学だけでなく、あらゆる分野で必要なスキルだと思います。「観察する力」「分析する力」「考える力」「伝える力」を身に着けた卒業生たちは、さまざまな企業で活躍しています。また、当研究室では昼食は研究室のメンバーが交代で作り、みんなで食べています。学生の昼食代を節約する意味もありますが、社会に出て一人暮らしをした時に調理は役に立ちますし、「お互いを思いやる心」や「仲間を大切にする心」を養えるので、大切なことだと思っています。

※所属・職名等は取材時のものです。

化学・材料コース

化学反応を取り扱う知識・技術を身につけ、あらゆる産業、先端材料、応用化学分野で生かす

産業界のあらゆる分野で活躍可能な、材料化学や次世代エネルギー源を扱う化学、分析化学などを学び、研究することができます。エネルギー化学分野や最新の材料を扱う先端材料化学に注力しているのも特徴で、環境や先端材料の分野でも活躍できる人材を育成します。