研究

2020.12.3

生物の不思議を解き明かし スムーズに動くロボットを開発

工学部 工学科 総合工学系 機械コース 生物模倣ロボット研究室

福井 貴大 助教 Takeshi Takahiro Hukui

教員プロフィール

ふくい・たかひろ
1989年茨城県生まれ。茨城大学工学部知能システム工学科卒業。茨城大学大学院理工学研究科修了(博士)。2019年4月に本学に着任。学部生時代から4足ロボットの研究を行ない、歩行走行運動を自律生成するためのロボット制御手法を提案してきた。現在は、4足ロボットだけでなく、魚など様々な動物型ロボットの開発を目指している。趣味はバイクで、将来は馬のように疾走するロボットに乗ることを夢見ている。

生物の動きの「不思議」を解明


 馬はすごいスピードで走ることができるし、犬や猫は砂利道でも難なく歩くことができます。ロボットでは難しいことを動物は簡単にやってのけています。なぜでしょうか? 私は学生時代から「動物の運動はどのようにして作り出されるのか」を研究していますが、実はまだ解明されていない部分が多いのです。人間もどうやって歩いているのか、完全には解っていません。私はその謎を解き明かし「動物の運動をロボットで実現するための制御方法」を開発しています。ロボット開発は機械工学・材料化学・電気電子回路・制御ソフトなど、あらゆる分野を網羅した総合工学ですが、そこに生物の動きを取り入れるには「生物学」「神経生理学」などの知識も必要になってきます。自身の五感をフルに活用し、洞察力を磨き上げて、動物の動きから多くの情報を汲み取る。それはすごく楽しく、やりがいのある研究です。

動物のように動くロボットが創る未来

この研究室では主に「制御システムに神経回路を組み込む」研究を行なっています。脊椎動物が動くには脊髄の中にある神経回路が重要な働きをしています。脳とは別にある神経細胞が動物の動きをスムーズにしてくれるのです。これは交通事故などで骨髄を損傷した人の下半身が動かなくなる理由の一つです。この神経回路をモデル化してプログラミングすれば、手足が不自由になった人をサポートするロボットを作ることができます。介護や福祉の現場で活躍してくれるでしょう。また、災害復旧などの現場ではロボットが使われるようになっていますが、動物のようにスムーズに動くロボットがあれば、救助犬のように過酷な場所にも入って行くことができます。このように動物のように動くロボットは大きな可能性を秘めています。将来的には、動物型ロボットを相棒として一緒に旅ができる日が来るかもしれません。

求めるのは「成果」です

 子供の頃に頑張った子は「がんばった賞」がもらえました。しかし、残念ながら大人には「がんばった賞」はありません。社会に出て求められるのは「成果」です。成果を上げた人だけが、そのプロセスも評価されます。だからまず、成果を上げてください。そうすれば人々はプロセスも称賛してくれます。それが快感となってモチベーションが上がり、次なる成果を生み出していくのです。この研究室は「成果主義」です。小さな成果を積み上げていくことが最も大切なことだと思っているからです。成果をあげる方法を体得した人は、社会に出ても実績をあげることができます。私は学生たちが成果をあげるためのサポートを行っています。

※所属・職名等は取材時のものです。

機械コース

一人一台のロボットを作りその機能を高めていくことで多面的な能力を身につける

ものづくりの基礎となるメカ・回路・プログラミングを、ロボットという具体的なモノを通して学ぶことができます。個人やグループでロボットを制作する授業が毎年配置されており、年次に従って、課題となるロボットもレベルアップ。コンテスト形式で技術の習得を目指します。